指定業者の下請け構造に踏み込んで分かった、原状回復見積が高額になる理由

オフィス退去時に提示される原状回復見積は、工事内容だけを見ても金額の妥当性を判断しきれないことがあります。
見積書に記載されている工事項目そのものは、賃貸借契約書に定められた原状回復義務の範囲内であっても、工事単価や諸経費が高く設定されている場合、最終的な原状回復費用は大きく膨らみます。
今回は、実際の原状回復費用の適正化支援の中で、通常は見えにくい指定業者の下請け構造に踏み込むことで分かった、原状回復見積が高額になる一つの要因について、匿名化した事例としてご紹介します。

千代田区のオフィスビルでの相談
ある企業様から、千代田区内のオフィスビル退去に伴う原状回復見積についてご相談をいただきました。
通常どおり、賃貸借契約書と原状回復見積書をもとに査定を行ったところ、工事項目そのものに大きな違和感はありませんでした。
見積書に記載された工事内容は、賃貸借契約書に定められた原状回復義務の範囲内と考えられる内容でした。
しかし、工事単価や諸経費の水準が非常に高く、全体として大きな適正化余地があると判断しました。
査定の結果、約35%、金額にして約140万円程度の原状回復費用の適正化が見込める内容となりました。
その査定結果を依頼企業様にご提示したところ、正式にご依頼をいただき、貸主側・管理会社側・指定業者との協議に進むことになりました。
工事内容に大きな相違はなかった
協議当日、まず現地調査を行い、その後、ビル側のPM担当者と指定業者の工事担当者と顔合わせをしました。
指定業者から見積書の説明を受けましたが、査定段階で見ていた内容と大きな相違はありませんでした。
原状回復義務の範囲から大きく逸脱している工事が含まれていたわけではありません。
この時点で明確だったのは、問題の中心が「不要な工事が多い」ということではなく、工事単価や経費関連の金額設定にあるということでした。
原状回復費用の適正化では、工事項目だけを見るのでは不十分です。
同じ工事内容であっても、単価、数量、諸経費、施工体制によって、最終的な見積金額は大きく変わります。
この案件では、まさにその構造が見え始めていました。

下請け業者の変更を打診したところ、珍しく了承された
協議の最後に、指定業者に対して、下請け業者を弊社の推薦業者に変更することが可能か確認しました。
通常、このような打診は断られることが多いです。
多くの指定業者には、日頃から付き合いのある下請け業者がいます。工事品質、管理体制、過去の取引関係などを理由に、外部からの下請け業者の起用を認めないケースが一般的です。
ところが、この案件では珍しく、指定業者から「問題ない」と回答がありました。
この時点では、なぜすんなり了承されたのか少し違和感がありました。
ただ、結果的にはこの判断によって、通常であれば見えにくい指定業者と下請け業者の見積構造に踏み込むことができました。
推薦業者から見積を取得
翌日以降、弊社の推薦業者数社に現地調査を依頼し、それぞれ見積を提出してもらいました。
その中から、工事内容、金額、実行可能性の面で最も信頼できる業者を選定しました。
提示された見積金額を見る限り、当初の弊社査定金額内に収まると判断できる内容でした。
そこで、指定業者へ推薦業者を決定した旨を連絡し、下請け業者側の工事見積を提示しました。
この段階では、依頼企業様にとっても、原状回復費用の適正化に向けて非常に良い方向に進んでいるように見えました。
しかし、ここで見積金額が大きく変わる要因が明らかになります。
下請け見積に40%の上乗せを求められた
推薦業者の見積を指定業者へ提示したところ、指定業者側から、その下請け業者の見積金額に対して、以下の費用を上乗せするよう指示がありました。
- 安全管理費として25%
- 現場経費および一般管理費として15%
合計で、下請け業者の見積金額に対して40%を上乗せする内容でした。
この指示により、当初は査定金額内に収まると考えていた工事金額が、大幅に予算を超える形になりました。
この時点で、指定業者の当初見積が高額になっていた理由が、かなり明確に見えてきました。
工事項目そのものの問題ではなく、下請け業者の工事見積に対して、一定の経費率を大きく上乗せする構造が、原状回復費用全体を押し上げていたのです。
なぜ推薦業者の起用が認められたのか
当初、指定業者が弊社推薦の下請け業者を使うことをすんなり了承したことには違和感がありました。
通常であれば、自社が日頃から使っている下請け業者を変更することには消極的なケースが多いためです。
しかし、下請け見積に対して40%の上乗せを求められたことで、その理由が見えてきました。
初めて使う下請け業者であれば、既存の下請け業者よりも低い金額で見積を出す可能性があります。
その見積金額に対して大きな経費率を上乗せできれば、指定業者側としては、結果的に十分な金額を確保できる可能性があります。
もちろん、外部からその意図を断定することはできません。
ただし、少なくともこの案件では、下請け業者の見積に対して40%の上乗せを求められたことで、原状回復見積が高額化していた構造が見える形になりました。
原状回復見積の高額化要因は工事項目だけではない
原状回復見積を確認するとき、多くの企業は「この工事が必要かどうか」に目が行きます。
もちろん、工事項目が賃貸借契約書の原状回復義務の範囲内かどうかを整理することは重要です。
しかし、この案件のように、工事項目そのものに大きな問題がなくても、工事単価や諸経費の設定によって、原状回復費用が大きく膨らむことがあります。
特に指定業者制の場合、賃借人側が自由に施工業者を選ぶことは難しく、相見積もりも取りづらいことがあります。
そのため、見積書の総額だけでなく、以下の点を整理する必要があります。
- 工事項目
- 数量
- 単価
- 施工範囲
- 諸経費率
- 安全管理費
- 現場管理費
- 下請け業者の施工金額
- 指定業者側の上乗せ構造
原状回復費用の適正化では、単に「高いので下げてほしい」と交渉するのではなく、どこで金額が膨らんでいるのかを整理することが重要です。

最終的には査定金額で合意
弊社としては、退去企業様から原状回復費用の適正化を任されている立場です。
そのため、下請け業者の見積に40%を上乗せした金額を、そのまま依頼企業様に提示するわけにはいきません。
その後も、指定業者側と協議を続け、工事内容、単価、経費率、施工体制についてギリギリまで調整を行いました。
最終的には、指定業者側が自社の下請け業者で施工する形となりましたが、弊社の査定金額で合意することができ、滞りなく工事を発注することができました。
結果として、当初の見積から大きく原状回復費用を適正化することができました。
下請け構造に踏み込むことで見えることがある
この案件で重要だったのは、指定業者の下請け業者手配の構造に踏み込んだことで、見積が高額になっていた理由が見えたことです。
原状回復費用が高額になる理由は、必ずしも工事内容の過剰さだけではありません。
工事項目が契約内容の範囲内であっても、単価や諸経費、下請け業者への発注構造によって、最終的な金額が大きく変わることがあります。
原状回復費用の適正化では、見積書の表面だけで判断せず、どのような構造で金額が積み上がっているのかを整理することが重要です。
オージェントに相談できること
オージェントでは、オフィス退去時の原状回復費用について、賃貸借契約書と原状回復見積書をもとに、工事項目、数量、単価、施工範囲、諸経費の妥当性を整理します。
単なる値下げ交渉ではなく、契約内容と見積内容を踏まえ、退去企業の立場で原状回復費用の適正化に向けた論点を明確にします。
また、必要に応じて施工体制や下請け構造に関する論点も整理し、なぜその金額になっているのかを可視化していきます。
原状回復見積に疑問がある場合は、発注前の段階で早めにご相談ください。
まとめ
指定業者の原状回復見積が高額になる理由は、工事項目だけにあるとは限りません。
工事内容そのものが契約書の原状回復義務の範囲内であっても、工事単価、諸経費、下請け業者への発注構造によって、原状回復費用が大きく膨らむことがあります。
今回の事例では、下請け業者の見積に対して40%の上乗せを求められたことで、見積が高額になっていた構造が見える形になりました。
原状回復費用の適正化では、見積書の総額だけでなく、どこで金額が積み上がっているのかを整理することが重要です。
オフィス退去時の原状回復見積に疑問がある場合は、早めに内容を整理することをおすすめします。
原状回復費用について相談する
原状回復見積の金額や諸経費に疑問がある場合は、賃貸借契約書と見積書をもとに、原状回復費用の適正化に向けた論点を整理します。
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